2014年4月19日土曜日

Royals

ニュージーランド生まれのロードは、現在17歳の女の子。決して超美形というわけではないし、声や歌い方も随分と落ち着いた雰囲気だが、うちの娘とは1年と歳が変わらない。















「同じ世代」という贔屓目があったのか、娘の自慢は「デビューする前からロードを知っていたこと」らしく、2012年11月の時点でSoundCloudに無料公開されていたThe Love Club EPをダウンロードして毎日のように聞いていた。去年は女の子ばっかり大挙して、ロードの初コンサートツアーも見に行かれなすって、帰りに迎えに行くと「緊張してたみたいだけど頑張ってた」などと評論してた。

そんなロードの音楽が2013年の夏頃からラジオから盛んに漏れ聞こえてくるようになり、
「女王とお呼び」、「キャデラックに乗っているの」みたいな歌詞に反応して、ちょっと小ばかにしてみると、うちの娘は、「歌詞の内容を何にもわかってない」などとツンとする。

悔しいんで歌詞を調べてみると、確かに中々に深みのある曲だ。そんなことを考えてから、もう半年も経ったわけですが。





Royals by Lorde (2013)

I've never seen a diamond in the flesh
I cut my teeth on wedding rings in the movies
And I'm not proud of my address
In the torn up town, no post code envy
 
1)
ホンモノのダイヤなんて見たことないわ
映画に出てきた結婚指輪を食い入るように見ていたの
住んでいる場所なんて自慢にならないわ
こんな薄汚れた街並みの、郵便番号を羨ましがる人なんていない
 
 
[Chorus]
But every song's like:
Gold teeth
Grey Goose
Tripping in the bathroom
Bloodstains
Ball gown
Trashing the hotel room
We don't care, we're driving Cadillacs in our dreams
 
2)
でも、最近の歌ってみんな一緒
金の入れ歯
グレイグース
トイレでハイになること
血の染みつき
ダンスホール向けのドレス
ホテルでの大騒ぎ
こんなのどうでもいいわ
夢の中ではキャデラックに乗ってるから
 
 
[Chorus]
But everybody's like:
Crystal
Maybach
Diamonds on your timepiece
Jet planes
Islands
Tigers on a gold leash
We don't care, we aren't caught up in your love affair
 
3)
でもみんな同じ歌ばかりなのよ
クリスタル
マイバッハ
ダイヤ入りの時計
自家用ジェット
南の島
金の鎖に繋がれたトラ
こんなのどうでもいいわ
あなたたちの悪趣味に興味なんかないもの
 
 
[Chorus]
And we'll never be royals (royals)
It don't run in our blood
That kind of lux just ain't for us, we crave a different kind of buzz
Let me be your ruler (ruler)
You can call me queen bee
And baby I'll rule, I'll rule, I'll rule, I'll rule
Let me live that fantasy
 
4)
王室ごっこなんてしたくないわ
そんな血は流れてないからね
高級品なんて私たちのものじゃない
もっと違う何かが欲しいの
あなたの支配者になりたいわ
女王蜂って呼んでも良いわよ
私が全てを支配するから
そんな夢を見させてよ
 
 
My friends and I we've cracked the code
We count our dollars on the train to the party
And everyone who knows us knows
That we're fine with this, we didn't come from money
 
5)
友達と一緒に全てを解読しちゃったわ
パーティに行く電車の中でお金を確かめている
私たちのことを知ってる人はみんなわかってる
私たちはそれで満足してるってことを
裕福な身分じゃないんだもの
 
 
[Chorus]
But every song's like:
Gold teeth
Grey Goose
Tripping in the bathroom
Bloodstains
Ball gowns
Trashing the hotel room
We don't care, we're driving Cadillacs in our dreams
 
[Chorus]
But everybody's like:
Crystal
Maybach
Diamonds on your timepiece
Jet planes
Islands
Tigers on a gold leash
We don't care, we aren't caught up in your love affair
 
[Chorus]
And we'll never be royals (royals)
It don't run in our blood
That kind of lux just ain't for us, we crave a different kind of buzz
Let me be your ruler (ruler)
You can call me queen bee
And baby I'll rule, I'll rule, I'll rule, I'll rule
Let me live that fantasy
 
 
ooh ooh oh ooh
We're better than we've every dreamed
And I'm in love with being queen
ooh ooh oh ooh
Life is great without a care
We aren't caught up in your love affair
 
6)
ooh ooh oh ooh
私たちって、自分で夢描いている存在より良いものよ
自分自身の女王であることが堪らなく好きなの
ooh ooh oh ooh
人生って、細かいコトを気にしないほうが良いのよ
あなたたちの悪趣味に興味なんかないもの
 
 
[Chorus]
And we'll never be royals (royals)
It don't run in our blood
That kind of lux just ain't for us, we crave a different kind of buzz
Let me be your ruler (ruler)
You can call me queen bee
And baby I'll rule, I'll rule, I'll rule, I'll rule
Let me live that fantasy

 
 
 
 







○ 解説 ○

Royalsを端的に説明すると、「物欲的なポップカルチャーへの反逆」だ。

ロードは、14歳の時にユニバーサルと契約し、そこからシンガーソングライターとしての手解きを受けて音楽業界に入った。The Love Club EPは、16歳になってちょうどの頃だから、この曲を作ったのは15歳のころ。練習のために、ポップソングを聴いて自分のギターでカバーするようなことを続けながら、「メロディは良いのに、歌詞は酒とか薬とかジュエリーばかりで馬鹿みたい」と思っていたそうな。ようするに、この曲のタイトル「ロイヤルズ」(王家の人)の意味は、「ポップカルチャーという幻想を、ティーンエイジャーに売りつけて、大金持ちになった人たち」のことなわけ。

そう言われると、「Queen Bee」(女王蜂)でビクっと来る。これは、”ポップ界の新女王”なんて言われる、「Queen B」こと”ビヨンセ”のレトリックなわけね。


1)
流石にダイヤモンドを目にしたことがないって子供はいないと思う。ニュージーランドも、きっとショッピングモールに行けば宝石チェーン店の1つや2つはあるだろうし、このあたりは「自分の境遇」をリリカルに強調するためのものだろう。

Royalsのミュージックビデオを見ればわかる。普通のティーンエイジャーは、高級車を乗り回してデートなんかしないし、ただただ時間を過ぎるのを無意味に待っていることが多い。妙なボクシングで口の中を切ってしまったり、テレビのチャンネルを変えつづけたり、プールの底に立てるかどうか確かめてみたり…。

アメリカは、その国土が5桁の郵便番号に統一されていて、ニューヨークは1から始まり、カリフォルニアは9から始まる。それを細分化すると、1990年代のTVドラマ「ビバリーヒルズ青春白書」(原題: Beverly Hills 90120)みたいに、郵便番号から生活水準が特定できるような場所もある。「Post Code Envy」(郵便番号への妬み)って、ニュージーランドにもあるんだろうか?

2)
Royalsには短い単語が連なっていて意味が分かり難いものがあるけど、「Queen B」と同じで、その多くがポップアーティストに繋がってくる。抽象的なものは特定できないし、そのあたりは個人攻撃にならないようにロードやプロデューサーも気を使ったはずだけど。

「金の入れ歯」って、既に80年代あたりからラッパーの間では流行し始めていた。まあ偽物だろうけどダイヤモンド版もあって、自動車のフロントの銀色部分に見立てて「グリル」って言うんだよね。ロードのことなら、白人なのにグリルを付けて笑われちゃった”キーシャ”のことを指しているんじゃないかと推測。

「グレイグース」はウォッカの高級ブランド。適当に検索すると、”カニエ・ウェスト”の「Primetime」という曲の中に、「お気に入りのクラブに出掛けてグレイグースをオーダーする」(I hit the club and order some Grey Goose)という歌詞がある。

「トイレでハイになること」
「trip」は、麻薬を利用するという意味。ハリウッド映画なんかでは、イケイケ状態を維持するためにトイレで鼻からコカイン吸ってるようなシーンは良くあるね。

「夢の中ではキャデラックに乗ってるから」
この一節はどう解釈するべきか。本当はキャデラックに乗る生活がしたいということか、それとも、そんなのは夢で十分ということか。後者だろうね。

3)
「クリスタル」は水晶のことか、合成麻薬の「クリスタル・メス」のことか。どっちにせよ、成金・物欲趣味なヒップホップカルチャーとは関連性が深い。”リアーナ”が「Crystal」って曲を持ってる。

「マイバッハ」は高級車。”マイリー・サイラス”とか”Pダディ”を始めとするセレブの愛車。

「金の鎖に繋がれたトラ」は、確実に”ラナ・デル・レイ”の「Born to Die」のミュージックビデオを意識したもの。ロード自身が個人的に良く聞いていたポップアーティストに上げているし、その歌い方からも影響を受けているのはわかる。

4)
前半と後半で異なる感情がぶつかり合っている感じ。特に後半は「本当はあんな生活を夢見ている」っていう、「子供のお姫様への憧れ」と、「私のような生身の生き方を崇拝しろ」という対極的な意味を重ねていて非常に秀逸。こんな詞を15歳で書くんだから最近の高校生は侮れない。

「lux」とはluxuryとかdeluxの省略形。

「buzz」とは、ブンブンと蠅が飛んでいる音のことのことだけど、「皆が注目しているもの」という意味もある。「上級生活への崇拝じゃなく、違ったトレンドが欲しい」ということ。「love affair」は情事という意味だけど、「他人の物欲を傍から見ている白けた様子」を示唆しているので、「悪趣味」とちょっと無理やり変換。

5)
パーティと言っても、どうせ友達の家に集まるだけ。ハリウッドスターのような豪勢なパーティなど無縁の生活。「シンディちゃん、ソーダとおやつ持ってきてって言うてたで」、「お金足りてる?」、「あかんわ。帰り、歩きやな」。そんな、普通のティーンエイジャーの生活で、ティーンエイジャーたち自身は満足し、それなりに楽しんでいる。

6)
まあ、この歌でロードの言いたいことをまとめた見たいなエンディング。

サンフランシスコはお金持ちが多い。娘の知り合いなんかにも、超有名レストランのオーナーとか、ソーシャルネットワークの開発者を親に持つ、みたいな子供たちもいて、娘も「普通過ぎる自分」に劣等感を持ちつつ、それをバネにして成長しているんだろう。

日本では、ポッと出の10代の女の子が、いきなりAKB48やらジャーニーズ批判の曲なんて歌い始めたら、即メディアから排除されてしまうかも知れない。でも、大人から押し付けられた物資主義的な生活への憧れでなく、「自分の本分を理解した生き方」をしようとするティーンエイジャーも少なからずいるんだということをこのRoyalsは訴えかけて、それなりに支持する人たちもいる、とバブルの頃にティーンエイジャーだった私は思うのです。


おススメ
自分の生き方を求めたい、という若者たちが聴く曲


2013年1月6日日曜日

Exploratorium

Exploratoriumをカタカナにすると「エクスプロラトリウム」という
舌を巻いちゃいそうな名前になるのだけど、科学や物理の実験を
面白く体験してもらおうという趣旨のインタラクティブな科学館。
サンフランシスコや近隣の町の子供たちにとっては、
学校の課外授業や誕生日会なんかでわりとお世話になっている場所だ。





このエクスポラトリウムは、ゴールデンゲートに行く途中でやたらと目立つ
Palace of Fine Artsというビルの中にあって、40年近く親しまれていた。
でも施設が老朽化していたこと、それから本来の建物の目的でもある
アート中心の多目的ホールに戻そうという意味があって、
エクスプロラトリウムは1月2日で閉館した。





最終日は無料で一般公開されていたので、
思い出にと子供たちを連れて行ってきたけど、
やっぱり実験用具に並ばなければならないほど混んでいた。
子供より大人がいっぱいいたような気もするが、
サンフランシスコで青少年期を過ごした人たちには
感慨深いものがあるのかも知れない。

今後、エクスプロラトリウムはエンバーカデロのフェリー乗り場に近い、
ピア15に移設して、4月に再オープンすることになるそうな。
観光客も足を運びやすいアトラクションになるだろうけど、
地元の人はパーキング探すのに苦労するかもね。







2012年12月23日日曜日

Meant to Live

クリスチャンロックなどと聞くと、
キリスト教徒の若者たちが、コンサート会場で手を天に掲げながら
恍惚とした表情で聞いているようなイメージがある。

でも、Switchfoot(スウィッチフット)はグローバルに訴えるメッセージに徹し、
宗教色を表に出さない、秀逸なアルタネイティブロックだ。
中でも、このMeant to Liveは、印象的なギターのリフが聞き飽きない傑作。






















2003年の年間ロックチャートで6位。収録アルバム
「The Beautiful Letdown」は260万枚の大ヒットになり、
「Dare You to Move」と共にラジオで良く流れていた。
映画「Spider-Man 2」で使われていたらしいけど、全く記憶にナシ。




Meant To Live by Buzz Cuts on Grooveshark

Meant to Live by Switchfoot (2003)

Fumbling his confidence
And wondering why the world has passed him by
Hoping that he's bent for more than arguments
And failed attempts to fly, fly

1)
彼は自信のなさに気付きつつ、
なぜ世界が自分の目の前を過ぎていくのか考え込む
自分は口先ばっかりで卑屈になってるんじゃないんだと
離陸に失敗してばかりじゃないんだと願いながら


[Chorus]
We were meant to live for so much more
Have we lost ourselves?
Somewhere we live inside
Somewhere we live inside
We were meant to live for so much more
Have we lost ourselves?
Somewhere we live inside

2)
僕らにはもっと意味のある生き方があったはず
もう僕らは自分を見失ってしまったのかな?
僕らはどこかに閉じこもったまま生きている
僕らはどこかに閉じこもったまま生きている
僕らにはもっと意味のある生き方があったはず
もう見失ってしまったのかな?
僕らはどこかに閉じこもったまま生きている


Dreaming about Providence
And whether mice or men have second tries
Maybe we've been livin with our eyes half open
Maybe we're bent and broken, broken

3)
彼は神の摂理について夢見つつ
二十日鼠と人間には2度目の挑戦があるのかと思いを馳せる
きっと僕らは目を半分しか開けずに生きているんだ
きっと僕らは傷ついて、壊れてしまっているんだ


[Chorus]
We want more than this world's got to offer
We want more than this world's got to offer
We want more than the wars of our fathers
And everything inside screams for second life, yeah

4)
この世界が与えてくれる以上のものが欲しい
この世界が与えてくれる以上のものが欲しい
父親たちが戦ってきた戦争以上のものが欲しいんだ
そして僕の体の中の全てが、第二の人生を求めて叫び出す


We were meant to live for so much more
Have we lost ourselves?
We were meant to live for so much more
Have we lost ourselves?
We were meant to live for so much more
Have we lost ourselves?
We were meant to live
We were meant to live

5)
僕らにはもっと意味のある生き方があったはず
もう僕らは自分を見失ってしまったのかな?
僕らにはもっと意味のある生き方があったはず
もう僕らは自分を見失ってしまったのかな?
僕らにはもっと意味のある生き方があったはず
もう僕らは自分を見失ってしまったのかな?
生きるために生まれてきたんだ
生きるために生まれてきたんだ























○ 解説 ○

このMeant to Liveは、イギリスの詩人T.S.エリオットの「うつろな人間」に
影響を受けて書かれたものらしく、Switchfootのリード、Jon Foremanは
「この歌詞の主人公は僕のことかも知れない。僕らは、心の中のどこかで
美しい真実を探している。ひょっとしたら、もっと別の生き方が
あったかもしれない。」と、どこやらのインタビューで語っている。

また、Switchfootは、自分たちは「信仰心はあるが、自分たちが
クリスチャンロックのバンドだなんて思っていない」とも発言している。
自分たちにレッテルがつけられるのが嫌で、一時はそういった音楽祭に
出入りすることも躊躇っていたらしい。そんな思いからか、Switchfootの曲は
概して複数の意味にとれるような歌詞になっているらしく、
このMeant to Liveにも「Providence」という聖書の言葉は出てきても、
直接的にキリスト教的なメッセージは伝わってこない。



1) 「彼」は、抽象的な意味での若い男。自分の可能性を信じて疑わない
10代が終わり、社会の現実を知って何も達成できていないことに気付く。

「Fumble」は、アメフトなんかで良く聞く言葉で、
ボールが手につかずに落としてしまうこと。この歌詞の場合、
自分に自信がなくてオロオロしているような状態だろう。

「Bent」とは、文字どおり「心が折れ曲がって、傷つき、
ボロボロになっている様子」を表す。


2) この部分だけだと、過去形なので絶望的に聞こえるけど、
歌詞を全体的に読むと、「まだやり直せる」ということを
強調しているのがわかる。非常にポジティブで前向きな歌だ。


3) 歌詞中の「Mice and Men」の下りは、スタインベックの
「二十日鼠と人間」の原題である「Of Mice and Men」から。
いくら計画しても、上手く結果が出ない人生の無常さを歌っている。

また、「Maybe we're bent and broken」は、C.S.ルイスの
「沈黙の惑星を離れて」という小説からの引用だ。
妥協して生きてきて、思い描いていた姿とは異なる自分…。
Foremanさんは、良く本を読む人なんだろうな。


4) 心の中の絶叫で、この曲のクライマックスになる部分。
「第二の人生」は、キリスト教的にカルマ思想はないから、
「本来の別の生き方」という意味だと思う。

5) そもそも「We are meant to live」というのは、
「(誰かに)自分の人生が意味付けされている」ということだから、
このあたりは「神によって生を受けた人の命」という
キリスト教的な意味が込められている。
自分で命を落としたり、自分の人生を投げ出してしまうというのは、
そんなProvidenceに反している。自分が全うすべき人生を考え、
苦悩や後悔に喘ぎながらも、人は生きていくべきなのだ…ってこと。

高校の時、キリスト教信者でもないのにキリスト教系私学に通っていたが、
そう言えば週に一回の聖書の授業で「我々は生かされている」ということを
良く耳にしていたような気がする。
卒業後20年以上も経って、この曲を通して、
その意味が少し理解できたのかもしれない。
まあ、それでも宗教というと、信仰そのものよりも
哲学や教訓としてしか見れなんだけどね。



おススメ
「なんか自分の考えてた生き方と違う」と暗くなった時にポジティブになる曲
人生の意味など深く考えず、息子と車の中でノリノリになりたい時に聴く曲


翻訳・対訳し甲斐のある良い歌だ。
7000曲ほど詰まってる自分のiTunesの中でも、
一番聞いている曲なのが頷ける。




2012年12月19日水曜日

サンフランシスコの木

Bottlebrush (学名:Callistemon)

文字通り、花がボトルブラシのような形状をしている不思議な木。






サンフランシスコ(というかカリフォルニア)は、
降雨が12~3月に限られていて、乾燥している季節がとても長いので、
1920年代に多くの街路樹を、乾燥に適応した樹木の多いオーストラリアから輸入した。
有名なのはユーカリの木ね。

このBottlebrushも、オーストラリア現地では40種類くらいあるらしいが、
サンフランシスコで見かけるのはCrimson Bottlebrushと、
枝垂れ型のWeeping Bottlebrushの2種類。どちらも赤い花をつける。
オーストラリア産の樹木は学名しかないのも多いけど、
Bottlebrushは珍しい一般名称。蜜が甘いのか、ハミングバードを良く見かける。



本来は灌木で、庭先ではもっさと生えていたりする。
街路樹で利用されているのは、木のように剪定して3mほどに育てたものだ。
冬のこの季節になると花を付け、濃い緑色の葉とのコントラストが
ちょっとクリスマスっぽい気分にさせてくれる。

ただし、枯れ始めると花弁が1本1本落ちて非常に汚く見えるので、
路上駐車するときは避けたい。




2012年12月16日日曜日

Human Nature

流星群を見に行った。
とても静かなところで、流れ星が良く見えた。

すると、空からポッ!ポッ!という音が聞こえてくる。
ひょっとして、流れ星が大気圏に突入するときの音なのか?
そんな話は聞いたこともないけど、確かに音は聞こえる。
もちろん、流れ星が見えるのと、聞こえる音は合っていない。
音と光の伝達には速度の差があるのだから当然だ。

中年のおっさんでも、こんなに感動することなんてあるのだろうか?
宇宙の広さ、いや自分の小ささをこれほどまでに感じるのは何故だろうか?

そのときに、頭の中に流れてきたのが マイケル・ジャクソンの名曲
「ヒューマン・ネイチャー」の 「Looking out across the night time」という冒頭部分。

で、気になったので家に帰って歌詞検索してみたら、
美しいメロディやコーラスとは裏腹に、
都会のナンパソングでちょっと残念。
マイケルの天からの啓示があったのかと思ったんだけどねw

せっかくなので和訳してみようと思うが、日本語検索すると、
けっこう歌詞を手掛けている人が多いのを知った。
参照:
大西さん訳
吉岡さん訳

ただ、僕の思う訳とは多少異なるので、自分バージョンの対訳も書いておこうと思う。



Human Nature by Michael Jackson on Grooveshark


Human Nature by Michael Jackson (1983)

Looking out
Across the night-time
The city winks a sleepless eye
Hear her voice
Shake my window
Sweet seducing sighs

1)
夜景を眺めていると、
眠らない街がウィンクしてくる
この街に耳を傾けると、
その声が僕の窓を揺らし、
甘い溜息を投げかけてくるんだ


Get me out
Into the night-time
Four walls won’t hold me tonight
If this town
Is just an apple
Then let me take a bite
 
2)
ここから出してよ、夜の街へと
今夜は壁の中に閉じこもってられない
もしこの街がただのリンゴなんだったら、
僕にも一口くらい味わわせてよ


[Chorus]
If they say -
Why, why, tell ‘em that is human nature
Why, why, does he do me that way
If they say -
Why, why, tell ‘em that is human nature
Why, why, does he do me that way

3)
もし彼らがなぜ、なぜって言うなら、
これが人間のサガだって答えてやるよ
なぜ、なぜ彼は私にこんなことするのって言うならね
もし彼らがなぜ、なぜって言うなら
これが人間のサガだって答えてやるよ
なぜ、なぜ彼は私にこんなことするのって言うならね


Reaching out
To touch a stranger
Electric eyes are everywhere
See that girl
She knows I’m watching
She likes the way I stare

4)

見知らぬ人に触れるため手を伸ばす
街の明かりがそこら中できらめいている
あの娘を見てみなよ
彼女は僕が見ているのに気付いているよ
僕の視線にまんざらでもないみたいだ


If they say -
Why, why, tell ‘em that is human nature
Why, why, does he do me that way
If they say -
Why, why, tell ‘em that is human nature
Why, why, does he do me that way
I like livin’ this way
I like lovin’ this way

5)
もし彼らがなぜ、なぜって言うなら、
これが人間のサガだって答えてやるよ
なぜ、なぜ彼は私にこんなことするのって言うならね
もし彼らがなぜ、なぜって言うなら
これが人間のサガだって答えてやるよ
なぜ、なぜ彼は私にこんなことするのって言うならね
僕は、こんなふうに生きたいんだ
こんなふうに恋してみたいんだ


(instrumental section)
Looking out
Across the morning
The city’s heart begins to beat
Reaching out I touch her shoulder
I’m dreaming of the street

 6)
街の夜明けを眺めていると
街が動き出すのが聞こえてくる
彼女の肩をそっと触ってみると
街での出来事を思い出すんだ


[Chorus]
If they say -
Why, why, tell ‘em that is human nature
Why, why, does he do me that way
If they say -
Why, why, tell ‘em that is human nature
Why, why, does he do me that way
I like livin’ this way

[Repeat Chorus - Ad-lib/fade-out]























○ 解説 ○

Human NatureはTOTOがクインシー・ジョーンズに提供した曲だが、
詩の部分は途中までしかできておらず、ジョン・ベティスが2日で仕上げたという。
でも、他の曲同様に、かなりマイケル自身の意思も多分に込められておかしくない。
この詞には、マイケルがニューヨークを講演やテレビ出演で訪れたとき、
もしくはニューヨークにいることを想定して、彼の思いが書かれているのだろう。

この時、マイケル25歳。マイケルは、子供の頃からスーパースターであり、
移動の車の窓から、公園で同じ年くらいの子供が遊んでいるのを見ては、
とてもうらやましく思っていたのだという。それは成人しても同じこと。
まだAIDSが拡散する前の1980年代前半、他の20代の若者がそうだったように、
街に繰り出して女をナンパし、一夜を過ごしてみるというような。
”普通の男の経験”に、彼は大きな興味を持っていたはず。



1) ニューヨークに来たのに、夜は父からホテルに缶詰めを言い渡される。
 マイケルが窓から階下に往来する人々をじっと見ている……。
そんな情景が思い浮かぶ。


2) リンゴはニューヨークの愛称「ビッグアップル」のこと。
都会で繰り広げられる 若者の生活を味わってみたい。
そんなマイケル自身の叶わぬ欲望が描かれている。
Four Wallsの部分を直訳すると、「4つの壁は、今夜の僕を束縛できない」。
なんだか、大スターの悲しい日常が見えてくる。


3) 訳としては難しい部分だと思うし、様々な解釈ができるからこそ名曲になり得る。
でも、僕的にはココの「彼ら」(tell'em)が誰なのかというと、タブロイドメディア、
お父さん、そして音楽業界の関係者、兄弟や親族たち。

マイケルの行動が「奇行」と騒ぎ立てられるようになり、そんなウソを信じた
肉親さえも誤解する。もはや普通の人間として生きていくことさえできなくなった。
マイケルにだって、普通の人間の持つ”ヒューマン・ネイチャー”はあるのに……。


4) マイケルがナンパを決行するシーンの描写。
でも、マイケルがナンパの成果を語りかけているのは、
街の照明や電飾、信号たちだ。 無機質な街の灯りにとっては、
マイケルは一人の人間でしかなく、唯一マイケルが心を開ける相手なのかも知れない。


5) 「Why, why, does he do me that way」の「彼」(he)の部分は、
神と訳されたり、 アメリカでも「ゲイ説」に発展したりしているけど、
ここはマイケル自身のセリフじゃなく、
「どうしてマイケルはあんなことを私にするの?」というような、
マイケルの行動に対する周囲の人たちの困惑した会話が重ねられていると考えるべき。

1つの文として並び替えるなら、会話文としてブロークンになっているけど、
「If they say why does he do me that way, I'll say that's a human nature.」となる。
だから「僕はこんな風に生きたいんだ」へと繋がってくる。


6) 朝を迎えたホテルの中で、一夜を共にした女がベッドに横たわる。
その女の肩を触ると、昨夜のナンパのドキドキ感を、もう一度味わいたくなってくる。



回りの者からは束縛され、誤解され、パパラッチに追いかけられては
あることないこと書き立てられる。

Human natureは、 人間のサガである性欲さえも満たせない、
そんなマイケル・ジャクソンの鬱憤を描いた歌だ。


ただ、皮肉なことにこのHuman Natureが収められたアルバム「Thriller」が
空前のヒットを飛ばしてしまい、彼はスーパースターからキング・オブ・ポップに昇華。
王となった彼は、もはや恋愛という”小さなこと”にも構うことさえ許されず、
1984年の「We Are the World」以降は、人類愛や環境問題といった、
より大きく、普遍的なテーマの歌詞を中心に、歌い上げていくことになる。


おススメ
常にスポットライトを浴びながら、寂しさから逃れなれなかったマイケルの素顔を偲ぶ曲
他人の目に束縛されて、自由に行動できないもどかしさを感じたときに聴く曲
 



アメリカに渡り住んで、もう四半世紀近くにもなる。

知らず知らずのうちにアメリカ文化に精通している…ような気がしている。
気が向いたときに、好きな曲の和訳やアメリカの風景でも描写していこうと思う。